─ 心が動かないときは、心ではなく体から始める ─
心がつらいとき、
「気持ちを切り替えよう」「前向きに考えよう」
そう思っても、うまくいかないことが多いですよね。
頭ではわかっているのに、心がついてこない。
動かなきゃいけないのに体が重い。
そんな自分を責めてしまい、さらに動けなくなる…。
実はこの状態こそ、心ではなく“体を整えるべき合図” なんです。
この記事では、
「なぜ心の回復は体から始めるとラクになるのか?」
「しんどい日でもできる“5分の小さな動き”とは?」
を、心理学と脳科学の視点からやさしく解説します。
あなたが「また歩き出せる」きっかけになれば嬉しいです。
心がつらいときに“心を変えよう”としてもうまくいかない理由
✅ 脳は「危険」を感じると、心のブレーキが効かなくなる
仕事や人間関係でストレスを感じているときは、不安な気持ちが広がっていきますよね。
それは、脳の扁桃体という部分が危険を察知して知らせてくれているのです。
もともと人間には脳の前頭前野という部分が「大丈夫だから落ち着いて」「大したことないから冷静になろう」とブレーキを掛けてくれる仕組みがあります。
しかし、ストレスが大きくなると扁桃体が過敏に反応してしまい、心のブレーキが効かなくなってしまうのです。
こんなときに、いくら悲観的な考えを打ち消そうとしてもなかなかうまくいきません。
「なんで自分はだめなんだろう」
こんな考えが頭の中をぐるぐる回ってしまいます。
✅ だから、気持ちを前向きにしようと頑張らなくていい
気持ちがつらいとき、ネガティブな考えが浮かんでしまうのは自然なこと。
これは、「自分が弱いから」とか「性格が内向きだから」ということではないのです。
本来人に備わっている脳の防御反応なのです。
だから、こころが疲れているときに「気合い」で乗り切ろうとしても難しい。
ますます「だめな自分」が思い出されて、気持ちが空回りしてしまいます。
心の回復は“体から整える”ほうがうまくいく
✅ ゆっくり動くと脳の警戒モードが解除される
嫌なことが思い出されて気持ちがきつくなっているときは、呼吸も浅くなっているものです。
そんなときは、深くゆっくりと呼吸をしてみてください。
呼吸は心のスイッチで、交感神経と副交感神経の切り替え役を担っています。
特に深くゆっくりと息を吐きだすと副交感神経が優位に働き、気持ちがリラックスできるのです。
また、軽いウォーキングなども効果的です。
リズミカルに体を動かすと血行が良くなり、前頭前野が活性化して心が落ち着いてきます。
自分に「安全だよ」というメッセージを送ることができるのです。
✅ たった5分歩くだけで“回復のスイッチ”が入る
ウォーキングなど軽く体を動かすだけでも、幸せホルモンのセロトニンが放出され、気持ちが穏やかになります。
たとえ、5〜10分程度でも効果があることが研究でもわかっています。
短い時間であっても、「やれた」という前向きの体験が心の回復に効くのです。
まずは「頑張る運動」ではなく「気持ちいい動き」を取り入れるようにしましょう。
しんどい日でもできる「5分のやさしい動き」3選
✅ ① 朝の深呼吸ウォーク
朝起きたら、短い時間でいいので家の前まで出てみてください。
ほんの5分だけ深呼吸をしながら歩いてみる。
呼吸のリズムに合わせて歩いてみると、かすかに気持ちの余裕を感じることができます。
それが一日を前向きに過ごすきっかけにもなるのです。
✅ ② 部屋の中の“ゆっくりストレッチ”
こころがざわざわしているときは、部屋の中でゆっくりとストレッチをしてみてください。
背伸びから首まわし、肩の上げ下げなど少しだけ体を動かすだけで、心の中が静かになっていきます。
ゆっくりとした動きと深い呼吸が緊張をゆっくりとほどいていきます。
✅ ③ ベッドの上で“体を起こす準備運動”
朝目覚めても体が重くて動き出せないときには、布団の中でやさしく体を動かしてみましょう。
つま先を動かしたり、手を握ったり開いたり、寝たままでできる動きでも効果があります。
仕事に行くことを考えると、起き上がれない日もあります。
でも、優しい動きで体を起動させることで動き出せるスイッチが入るのです。
小さな動きでも“心の地図”は書き換わっていく
✅ 「できなかった」ではなく「できた」に目を向ける
やろうと思ってもその日の体調や気分によってできない日もあります。
でも、運動をすることよりも「心を整えること」が大切なのです。
だから、「できなかった」ことを気にかけるより、「できた」と感じられる瞬間を増やしていきましょう。
そして、たった5分でも動けたら「1歩前に進めた」と自分を認めてあげてください。
たとえわずかでも「できた」ことの積み重ねが「自分はできる」という自己効力感を育てていきます。
✅ 心は“動いた体”にあとからついてくる
気持ちがつらいときは、どうしても気持ちをなんとかしようと頑張ってしまいます。
でも、体を優しく動かすことで、気分が上がり、こころを整えてくれるのです。
心がつらいときはあえて体から始めて、こころを溶きほぐしていく。
ほんの少しの行動が自分の考え方を変えていきます。
人と比べず、ゆっくりと自分のペースで取り組んでみてください。
《あなたへのメッセージ》
心がつらいときに必要なのは、
“大きな変化”や“強い意志”ではありません。
ほんの5分の小さな動き。
その積み重ねが、
「また歩き出せる自分」を取り戻してくれます。
焦らなくて大丈夫。
あなたのペースで、少しずつでいい。
今日も、あなたの中に小さな夜明けが灯りますように。
📘 もっと実践したい方へ
この記事の内容は、拙著
『夜明けが来るよ:心が疲れたときに、また歩き出せる小さな習慣』
第1章をもとにしています。
「心が動かない朝に、どうやって一歩を踏み出せばいい?」
「しんどい日でも続けられる優しい運動って?」
そんな悩みへの答えを、さらに丁寧にまとめています。

